
DESIGNER
鈴木 梓
Azusa Suzuki
キュー・デザイン株式会社 代表取締役
多摩美術大学環境デザイン学科インテリアデザイン専攻卒。内装設計会社、インテリアデザイン事務所を経て、2006年キュー・デザイン株式会社設立。店舗設計、インテリアデザイン、グラフィックデザインを手がけ現在に至る。
いかなるターゲットにもベストな世界観を実現
まさに想定外の幅広さ。キュー・デザインの代表・鈴木 梓氏の守備範囲をカテゴライズすることは不可能だ。例えば今どきの渋谷のストリート系男子がターゲットのアパレルに、銀座のセレブな女性のためのラグジュアリーなサロン。しっとりした日本料理店をデザインすれば、違いの分かる大人の男性の心をがっちりつかむ。全方位的な店づくりなどという漠然としたものではない。まったく異なるターゲットの求めるところを明確に把握し、店舗という形で表現することが可能なのである。
「何でもできる、というのが私の強みでしょうか。あえて得意ジャンルというなら、オーナー様の持つテーマを、悩みを解決しながら形にしていくのが得意です」と鈴木氏。自らのスタイルを“お悩み解決型”と分析する。そもそも人と会うのが好き、悩み事を一緒に解決することが好き。だから、問題点を解決しながらすてきな空間をつくる店舗の設計は、楽しくて仕方がない天職、と微笑んだ。
店舗をデザインする際、彼女が常に念頭に置くのは「空間体験」だ。異なる空間に足を踏み入れたときの驚きや喜び。それは鈴木氏自身が商空間デザインを志すきっかけとなった体験でもある。「ゾーニングを明確にすることで、お客様は店のどこにいても違った体験ができます。ただし、主役はあくまでも商品。商品を引き立たせつつ、全体としての一体感があること。そして居心地がいいこと。よりよい提案ができるよう、クライアント様とは何度もやり取りを重ねます」
世界観をいかにリアルかつ自然に形にするか。クライアントに対するヒアリングは入念だ。また、ターゲットの価値観の把握も重視。「例えば10代の少女がターゲットであれば、彼女たちが本当に喜ぶこと、好きなことはなんだろう? と話を聞きます。知れば知るほど面白くて。そんなリアルなところを一つ一つ置き換えるつもりで、デザインを考えていきます」。このヒアリング力、心を寄せていく共感力の高さこそ、鈴木氏の大きな武器といえるだろう。
もちろん、等身大の女性目線として、20~40代の女性層を喜ばせる店づくりも大得意。高感度、最先端、ナチュラル、オーセンティック。相反する価値観が矛盾なく共存するキュー・デザインの世界は、これからも無限に広がっていく。